【北朝鮮旅行記2】音楽に国境は無い

ここは北京首都国際空港第2ターミナル。

14:00 JS252

あの飛行機で、私は社会主義朝鮮へと旅立ちます。

「音楽に国境は無い」

実に、実に良い言葉です。そして、音楽というものの真理を簡潔に説明していると思いませんか。

思えば私が北朝鮮に興味を持ったきっかけも音楽でした。やはり音楽に国境はありません。

しかし、世界を隔てているものは国境線だけではありません。

韓国と朝鮮を隔てるもの…それが、軍事境界線。

音楽に国境は無い。この言葉は今や疑いようのない真実。素晴らしい音楽は世界中多くの国々で愛されています。音楽は国境線ごときに阻まれるようなものではないのです。

しかし…音楽は国境線ごときに阻まれるものではないというのは事実として、では軍事境界線には阻まれるのか？

私はこう思います。

世界は一つ！音楽が世界をつなぐ！真に偉大な音楽は、軍事境界線にさえ阻まれないのだ！

さて、皆さんが最も素晴らしいと思うアーティストは、歌手は誰ですか？

私はゲーマーです。任天堂が大好きなゲーマーです。

そんな私がその問に答えるならば…

イカの世界のトップアイドル！

シオカラーズです！！

そう、私はシオカラーズのことを、国境を、そして軍事境界線を越えるべき偉大なアイドルだと思っているのです。

そんな私が朝鮮に入国するというこの日この時の服装！それが！

引用元：https://editmode.jp/

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いったいお前が書いている記事は何なのか？

いったいお前は何しに北朝鮮に行ったのか？

最早私にも分かりません。何なんだろう、この記事は。脱線してばっかりでさっぱり話が進まないじゃないか。

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さて、北京空港で搭乗手続きをする際に…

なんか上手くいかないし言葉も通じねぇ…

はぁ、これが外国。これが異世界。

舐めていました。一人旅はつらいね。

そう思っていたところに…

現れました、在日のお姉さん！

そしてトラブルを聞きつけて手助けしてくださった、後ろに並んでた在日のおじさん！

皆さんの通訳により、どうにか手続きは無事終了。

いやぁ、頼もしい。そしてありがたい。

彼らは日本語・朝鮮語のネイティブスピーカー。朝鮮語がどのくらい世界で役に立つかはさておき…これがバイリンガルというやつですか…！いやぁ、素晴らしいねぇ…！憧れます…！

在日のお姉さんはどこかの（日本の）大学の団体を引き連れていて、言ってみれば親善活動として団体で朝鮮を訪問するようです。在日の方もいれば、純粋な日本人の方も何人かいたようです。

在日のおじさんは、北にいる親族に会いに行くとのこと。

ということは、ご両親が朝鮮北部出身だったということですか？と質問してみると…いや、もっと複雑なんですよ。とのこと。

なんでも自身の両親は南出身で、しかし親族が北に住んでいるのだとか。そう、いわゆる離散家族です。

在日の方々は北朝鮮のパスポートと一緒に「再入国許可証」を持っていました。経済制裁の影響で、北朝鮮籍の人は日本に帰る時にこういうのが要るのです。

在日のおじさんはそれについてこう言っていました。

「経済制裁をする事情というのも分かるけれど、僕はただ親族に会いに行くだけなのであって…ただ親族に会いに行くだけで、なぜ再入国許可証なんてものが必要になるのか。僕らも普通の人間なのであって、そういう人たちを日本政府は巻き込まないで欲しい。」

なるほどなぁ…しかしながら、私には何も言えないなと思いました。私の口から説得力のある言葉を出すことはできません。自分はそういう立場に無いと思ったのです。しかし…親族に、お母さんお父さん、兄弟姉妹に簡単に会えないというのは辛いことだろうと思います。いつか、自由に会うことができるようになるならば。そう思いました。

それにしても、在日のおじさんはそんな中で朝鮮や日本をどう思っているのだろう。訊いてみました。

「僕は日本で育ってるから、日本に馴染みがあって、日本が母国。けれど、朝鮮という祖国もあって、どちらも大切な場所。」

自分は日本生まれ、日本育ち。出自も日本で、親族も皆日本の人です。そんな自分に、こんな複雑な境遇にある人のことを完全に理解できる日は来ないかもしれない…思いがけず、人生とか故郷というのはいかなるものなのか考えさせられました。

他にはこんなことも聞きました。

「万景峰号のほうが楽で、一晩眠れば朝鮮に着いた。飛行機だと言葉の分からない北京で一泊しなきゃならないのがなかなかつらい。荷物の制限もあるしね。」

「朝鮮というのも日本じゃ悪く言われてるけど、自分にとっては大切な祖国。ただ…こう、いきづらい国だったかなぁ…と、最近、ちょっと思い始めてる…ところ。」（←この言い方がすごく悩ましくて、複雑で忘れられません）

こんな事も質問してみました。「あなたにとって、将軍様とは？」すると…

「偉大な指導者ですよ！」…なるほど。日本にいてあんなに悪い話ばっかりでも、そういう風に思うのかぁと、ちょっと興味深いものがありました。

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日本語の通じない異国の地で日本語が話せる人と会ったものですから、在日のおじさんとはこうして話が弾んでしまいました。

飛行機の搭乗待ちの間、在日のおじさんはこれまた別で来ていた在日のおじさんと話が盛り上がり…

なんでそういう話になったのか忘れましたが、私も巻き込んで飛行機の話に。

北朝鮮は今では世界的に珍しい飛行機を運行しており、特にヨーロッパの飛行機マニアなんかがそれを目的に旅行に来るほどです。在日のおじさん達もそれを知っていました。知っているというか、世間一般の人々から比べるとそこそこ飛行機に詳しかったような？

実を言うと、私も飛行機が目的のうちの一つで。今世界を飛ぶ飛行機はほとんどがアメリカの「ボーイング」かヨーロッパの「エアバス」で製造されたものなんですが、今回平壌へ向かう飛行機はロシアの「ツポレフ」製造です。やっぱ珍しいもの見たいもんね。マニアだもの。

ちなみに、ロシアどころかソビエト連邦で製造されたものまで北朝鮮は持ってます。まあ、そいつは北京-平壌間には就航しておらず（というかできなくなった）、ウラジオストク-平壌間とか、北朝鮮国内線なんかでしか乗れないですが。

ところで、北朝鮮の航空会社「高麗航空」にはある有名な逸話があります。搭乗前にして、そのウワサを在日のおじさん達に確認してみました。それは…

「機内食がおいしくないって聞いたんですけどホントですか！？」

いやはや、酷い質問だ…
こんなこと言われたら気分悪くするんじゃないかと思って、嫌な反応されると予想していたのですが…
「ああ～うんうん、あれほんと美味しくないよ！」
「ええ～！いやいや、俺はあれ嫌いじゃないよ！」
「いやぁ～、おいしくないよぉあれは！機内食ね、ハンバーガー１個しか出ないんだよ！もうちょっと改善しても良いと思うんだけどなぁ～！」
超笑いながら話してる。超盛り上がってる。

在日の人が言うなら間違いない！
高麗航空の機内食はマジで美味しくないらしい！

なぜか私の心はワクワクに包まれていました。なぜワクワクしてるんだ。美味しくないんだぞ。

そうこうしている間に、搭乗の時間がやってまいりました…！すごくドキドキする、ただ飛行機に乗るだけなのに…！
飛行機の入り口手前に新聞が置いてあるのは北朝鮮の航空会社でも同じ。この日の新聞は潜水艦発射弾道ミサイルの試験発射成功の記事。将軍様の笑顔が光っていました。

こんなかんじ

出発までの間機内で音楽が流れるのも他の航空会社と同じ。

その時流れてきた曲が…

공 격 전 이 다

今日本で最も有名（悪い意味で）な朝鮮音楽、攻撃戦だ。

決して新しい曲とも言えないのに、まさかホンモノを聴くことができるとは。

コンギョーコンギョー！コンギョッチョーニダーーー！

さて、離陸の時がやってまいりました。

ロシア製のわりと新しい機体とはいえ、北朝鮮の運行・管理体制で大丈夫だろうか…と、不安には思ったものの、実に快適な離陸でした。エンジンもわりと静かだし。

ただ、車輪をしまう時の音かな…床下から「ガコンッ」って音がしたのはちょっと怖かった。空の上なのに何かに乗り上げてしまったかのような音だったよ…

というわけで、やってまいりましたウワサの機内食！

さあ、世界最悪とも名高い機内食はいかなるものか…！胸の高鳴りが抑えられません…！！

さあ、出てこいや…！

本当にハンバーガー1個…！

あ、いや飲み物も出てきますよ。確かミネラルウォーターと、ぶどうサイダー？と、ヨーグルト飲料。

けどね…ハンバーガーは冷たいし、飲み物はぬるい…！

なんだろうね、なんかこう…そういう微妙な貧しさは…

南朝鮮傀儡共の大韓航空はいつもアツアツなご飯に、ちょっとしたおかずやデザート付けてくれるんですけど…？ミネラルウォーターも出してくれるし、それとは別にジュース出してくれるし、食後にはコーヒーまで出してくれるんですけど…？

朝鮮民主主義人民共和国の本気、見せてくれよ！高麗航空！美味しくて量も質も大満足なアツアツごはんを出して見ろよ…！

という茶番はさておき。

さて、その「美味しくない」ハンバーガー、いただきます…！！

具はカツと千切りキャベツ、それとチーズだったと思います。

温かくないからパンも肉も固くて…けど…

き、嫌いじゃない…！

想像してたよりは遥かに美味い…！

もしかすると私は世界一幸せな飛行機マニアかもしれません。なにせ世界最悪との噂もある機内食をそれなりに美味しいと思ってしまったのですから。

自分にとってみると、この世界に存在する機内食はすべて美味しいものなのだと、そういう可能性があるわけです！

機内から1枚。空の写真。

どこの国でも、空は美しいですね。美味しくないと有名な機内食のハンバーガーに舌鼓を打ちながら、我々は平壌へと飛ぶのでした…

【その3へ続きます】