2016年9月12日月曜日

【北朝鮮旅行記4】お金で買えないモノがある


おはようございます。こちらは早朝の平壌。
ホテルの窓からです。

2日目となる今日は、平壌から北におよそ150kmの位置にある「妙香山(ミョヒャンサン)」を観光します。
北朝鮮には主に4つの「名山」があります。朝鮮民族の最高聖地「白頭山(ペクトゥサン)」、「金剛山(クムガンサン)」、「七宝山(チルボサン)」、そして今日行く妙香山です。
妙香山はその名の通り「奇妙な香りが漂う山」としてその名が付けられました。
ということをおみやげ話として話すとほぼ毎回「変なにおいするの?」と聞き返されるんですが…奇妙な香りというのは木々や自然の良いにおいのことです。ですから、現代の言葉遣いにしたら「良い香りが漂う山」と解釈するのが正解ですね。

妙香山はなにせ150kmも先ですから、高速道路(無料、ゲート等無し)で向かいます。4日目に行った開城(ケソン)へ行く際にも高速道路を使いましたが、ガイドさん曰く…
「開城へ行く高速道路はまっすぐなんですが、妙香山へ向かう高速道路はところどころ曲がっているところがあります。美しい景色を楽しめるようにしてあるんです。」とのこと。確かに、自然豊かな景色は見ていて楽しかったです。道沿いにはコスモスが咲き誇っているところも。
しかし道路はところによっては穴あきガタガタで…上り下りに車線が分かれていて双方かなりの道幅があるんですが、穴を避けて運転するのでそうたくさん車はいないのに右に左に動くわ動く。そのへんちょっと貧しい国感出てました。

この川は確か香山川(ヒャンサンチョン)って言ってたかな?
澄んでいて美しい川でした。

しかしですね…自然は美しい。どこの国でも美しいんですが…
どこの国でもあんま変わらない。自然の景色を撮って「これ北朝鮮の景色です!」って言っても、そんなに面白くない。やっぱ北朝鮮は将軍様の肖像画や銅像を撮ってこそ面白いと思うんです。だからあんまり移動中写真撮らなかったですね…
いやでもほんとに自然の豊かさは素晴らしかったです。
高速道路なのに路端に牛いるとことかあったし。

もうすぐ到着です!

さて、妙香山に入りました。山の入口のところには、2012年頃?に完成した新しい高級ホテルがあります。

香山ホテル(ヒャンサンホテル)

この香山ホテルは妙香山を観光する人々のために建てられ、山の景色が楽しめるようにこのような形になっているのだそうです。頂上の丸い部分は北朝鮮の高級ホテルではおなじみの回転展望レストランになっています。

詳しいことはこのニュース映像で分かります。
もう一つ別の観光地の麻田ホテルとともにこの香山ホテルも紹介されています。

私はここには泊まりませんでした。今回の妙香山観光は日帰りなので。
そこからさらに奥に進むと…


ここは「国際親善展覧館」
金日成主席、金正日総書記に世界各国の人々から贈られたものが展示してあります。その国の美術品や工芸品をはじめとし、将軍様の肖像画を描いた絵画や絵皿などもありました。どれもガラスケースに入れられ、大切に展示されています。
様々な国の、その国特有の芸術品がたくさんあることから、ガイドさんは「ビザ無しで世界一周旅行ができる場所」と例えていました。実際に見学してみて、その例えはなかなか的を射ているなと思いました。
残念ながら中は撮影禁止!ソビエト、ロシア、中国をはじめとして、アジア、中東、ヨーロッパ、アフリカ、南米大陸などまさに世界各国からの贈り物が展示してありました。日本やアメリカからのもあります。

日本人の我々には少々信じ難いですが、北朝鮮はおよそ160か国と国交を結んでいます。世界には、日本政府が承認している国家が196か国あり、承認していない国家も数えれば206か国あるとされます。(Wikipedia:国の一覧
つまり世界では北朝鮮と国交を結んでいる国のほうが圧倒的に多いんですね。日本では異常な国扱いされがちな北朝鮮も、世界の国々からはそんなに白い目で見られていないわけです。

この国際親善展覧館、「北朝鮮に贈り物するクソバカ国家なんてあるわけないだろ。中スッカスカなんじゃねーの?」と思った方もいらっしゃるんじゃないかと思いますが…ま、このように北朝鮮と普通に国交がある国が大多数だと思えば、そんなわけ無く、むしろ回りきれなかったほどですね。通り過ぎただけで入れなかった展示室もいっぱいありますし、入れた展示室もゆっくり見てられるほどの時間はありませんでした。一つ一つの美術品が見応えあるので、もっともっとゆっくり見たかったんですけどね~。

ところで、この建物は実はわりと最近できた別館?らしいです。ここから少し離れたところに本館がありまして…


これが本館。「国際親善展覧館」というと、この建物のほうが知られていると思います。
どちらの棟も見ての通り朝鮮式建築で、「窓があるように感じられるが、窓がない」ことが特徴なんだとか。…なんだその特徴?
本館はこの写真に写っているのが正面入口ですが、本館は現在改装中とのことで、正面からは入れませんでした。裏口みたいなところから入りますと、そこには金正恩委員長に贈られたものが展示されていました。
ガイドさん曰く…
「金日成主席、金正日総書記、金正恩委員長は、自分宛に贈られたプレゼントを自分のものとして使うことはせず、人民皆の財産として、誰もが閲覧できるように贈り物をこうして大切に保管・展示しているのです。」
…いやぁ、素晴らしい…!なんと慈悲溢れる配慮でしょう…!これが将軍様の偉大な愛というものですか…!!

けど…
パソコンは展示しないで使ったほうが良いと思うよ?

2台展示してありましたが、いずれもレノボのパソコンで第1世代のCore i7搭載のもの。(ちょっと古いけどけっこう良いブツじゃねぇかよ)
片方はデスクでもう片方はノートでした。
ツッコミたくて仕方なかったですが、ツッコむ勇気あるわけないです。
いや、他に美術品とかもちゃんとありましたよ。デニス・ロッドマンのサイン入りバスケットボールとかもありました。
けど、パソコンがあまりにも面白すぎて…


展示コーナーを見終えた後は展覧館上層階にある展望台へ。中国人の団体と一緒でした。
ガイドさんは旅行中何回か「中国人てマナー悪いでしょ…」なんてことを言っていて、中国人のマナーの悪さは北朝鮮でもお墨付きの模様。


名山というだけあって、景色の美しさは本当に素晴らしかったです。観光の際にはハイキングができるプランもあるらしい(その場合先ほどの香山ホテルに泊まることに)ですが、今回は時間が無いので麓から眺めるのみ。
景色を眺めていたら、ガイドさんに「何か飲みます?」と言われまして…梨サイダーを頼みました。


若干炭酸が物足りないかんじはしましたが、美味しかったです。さて、半分くらい飲み終わったところで…
「それじゃ、1ユーロですね。」
待てよ!それ先に言えよ!サービスかと思ったじゃん!

そうそう。北朝鮮の通貨はウォン(北朝鮮ウォン)なんですが、外国人はウォンを使うことができず、お買い物の際にはユーロ(ヨーロッパ)や人民元(中国)などの外貨で支払います。ドルも使えるみたいです。昔は日本円も使えたらしいですが、今だと使えなくはないけど…みたいなかんじ。
ユーロがあんまり無いお店でお買い物をすると、ユーロで払って人民元でお釣りがきたり…みたいなことも。
ちなみに北朝鮮ウォンは政府公式のレートだと日本円とほぼ等価です。しかし実際には北朝鮮ウォンはもっと価値が低く、闇レートでは…これは気になる方はご自身で調べていただきましょうか。


さて、つづいては国際親善展覧館からすぐ近く、「普賢寺(ポヒョンサ)」という昔からあるお寺です。
昔からあるとは言っても、「朝鮮戦争の時にアメリカが焼きつくしたから金日成主席が再建したもの」だとか。豊臣秀吉の軍がここまで到達したこともあるのだとか。

ガイドさん曰く、「朝鮮には宗教の信仰の自由があり、政府も寺院や教会に援助を出しています。」とのこと。が、インターネット調べると国際的な人権団体の報告では……


お寺の入り口のところにあります、「解脱門(ヘダルムン)」。お寺の中にはいくつかの建物がありましたが、全て丁寧に現地のガイドさんが解説、それを付き添いのガイドさんが通訳して教えてくれます。
「この門は解脱門と言います。解脱というのはあらゆる苦しみから逃れることを指す仏教用語ですね。朝鮮は今、米帝(アメリカ)の侵略によって南北に分断されるという苦しみを負っています。朝鮮がその苦しみから解脱するためには、米帝を朝鮮半島から追い出す必要があるというわけですね。」

お、お寺関係ねぇーー!!まさかここでもそんな話するとは思ってませんでしたよ!!

北朝鮮では韓国(南朝鮮)というのはアメリカ帝国主義者によって占領されている傀儡国家という認識です。だから北朝鮮に言わせれば朝鮮は韓国そのものではなくアメリカ(とその手先)と対立している、というかんじなわけです。

その奥にもいろいろ建物があります。


全て現地ガイドさんによるご丁寧な説明付きなんですが…
解脱門での説明が強烈すぎたのと、付き添いガイドさんがたまにぼそぼそ喋りになって聞き取りにくいことがありまして、この二つは何言ってたかよく覚えていません…
2枚目の建物は本堂で、仏像が安置されていてお坊さんもいました。1ユーロを納めてお線香をあげ、100円を賽銭箱に入れて、合掌…こういうところではあまりお願いごとせず、無心になるタイプです。(まあ悟り開いてないから雑念は浮かんじゃうけどな)

「このお寺は山の中にありますから、僧侶の方は生活が大変なわけです。しかし朝鮮労働党が支援を行うことによって、僧侶の方もきちんと生活を送ることができています。このように、朝鮮は信教の自由を保証し、支援まで行っているわけです。」
とても素晴らしい。素晴らしいですよ。全く嘘偽りが無ければね…


お寺の庭園は春夏秋冬違った趣があって素晴らしいのだとか。ヘンテコな国でもやはり自然は美しいです。

そして、普賢寺を離れお昼ご飯の会場へ。妙香山から近くの町のホテルでした。


入っていきなりこれ。

国際親善展覧館を背景に人民を見守る金日成主席と金正日総書記。
この国はどこに行っても将軍様将軍様だ…

昼食会場はこの奥の食堂です。
廊下を移動中、どこかから「上を向いて歩こう」が聞こえてきました。日本の歌も結構人気あるという噂こそ聞いてはいましたが。ガイドさんも歌えました。


ご飯はまあ普通の。でもなんかスープと米以外全部冷たかったような…
食糧難が深刻と言われるこの国で、お腹いっぱいで残しちゃうくらい出てきました。すぐそこの団体席に座ってた中国人達もけっこう残してた。
豊かさアピールも結構だけど、外国人の見えないところで苦しんでいる人々にももう少し優しくしてあげてほしいもんです。

昼食後は再びガタガタの高速道路でまっすぐ平壌へと戻りました。


ここは平壌市内。車窓からだったので上手く撮れてないですが、中学生かな?
平壌の学校の学生服は可愛いと思います。赤いスカーフ?がとてもオシャレ。素朴なデザインの服が慎ましやかでいいかんじ。

続いてやってきたのは…


「北朝鮮といえばココ!」というかんじのスポットのトップに君臨するでしょうか。
「主体(チュチェ)思想塔」といいます。
朝鮮労働党の政治思想、「主体思想」を象徴する石塔です。石塔としては世界一の高さだとか。(今も世界一だったかな?よく覚えてないや。)


主体思想塔の川向うは「金日成広場」。あの軍事パレードの広場です。


そこから右のほうに目をやれば、高層アパート群。朝鮮は国家が住宅を無償で与えているため、ここの住宅も無償で提供しているものなんだとか。

主体思想塔はてっぺんに登ることができます。ちゃーんとエレベーターがあるんですよ。
主体思想塔の入り口のところはこんなかんじで…


いろんな国々の団体から寄せられたメッセージプレートが飾られています。
ところどころ日本語のプレートあるの見えます?
1970年代は北朝鮮ってまだあんまり変な国だと思われてなくて、しかもこの頃は韓国よりも経済が発展していたので結構日本人からの印象も悪くなかったんです。そういう時代の面影ってわけですね…
拉致問題が公になって、核開発して、ミサイル発射が問題になって…日本で北朝鮮の印象が悪くなった大きな要因は拉致問題だと思います。だから変な国だと思われだしたのって案外最近なんですよね。

という話は置いときまして、塔の頂上へ向かいます。
噂には聞いていたんですが…主体思想塔のエレベーターはめっちゃ遅い!
いや、そんなストレートに言ったら失礼か。ちょっと優しく言い直しますね。

振動も騒音も無く、とても静かで快適な乗り心地のエレベーターでした!まるで動いていないかのように静かです!!

…まあ、ね…
うん、遅い…
長い…はやくして…って。

こうして遅いエスカレーターの中で待ちに待った主体思想塔上からの眺めをご覧あれ。



日本人の多くが想像するであろう北朝鮮とは別物でしょう?
結構発展してるんですよ。平壌は、ね…。

塔の上から景色を眺めていると、欧米人らしき集団が。
塔を下りてみますと、その集団が乗ってきたらしき観光バスが停まっていました。
ツアー名は…「キムチツアー」

…キムチツアー……??
ガイドさん曰く「朝鮮料理が主体のツアーじゃないでしょうか?朝鮮料理の代表として『キムチ』の名をつけたんじゃないでしょうかね?」
なるほどな…
「日本人の場合は旅行に来てもあまりお金を出しませんから、『けちんぼツアー』なんて良いんじゃないでしょうかね?」とも…
やかましわ!事実だけど…


続いては、「朝鮮労働党創建記念塔」。
ここは…まあぶっちゃけつまんないので写真一枚で。気になる人は調べてください。以上。


そして夕食会場にやってきました。
「清流(チョンリュ)観光記念品商店」と書いてあります。
よーく見ると…窓、暗いでしょう?電力不足丸出しなかんじで、ほんとどこも薄暗いです。廊下とかバイオハザードの舞台かよっていう暗さ。


流石にお部屋はそれなりに明るかったですが…これまた日本基準だと「暗い」と言わざるをえないかなぁ…写真だとそう見えないですけど。

この日の夕食は実は事前に自分から希望を出していたオプション料理でして。


「神仙炉(シンソルロ)」と言います。
その昔は、天から降りてきたと考えられていた偉い人々「神仙」達だけが食べることが鍋料理です。(汁はこの写真を撮った後入れました)
山海の幸が36種類?も入ったとても贅沢な料理で、その美味しさに口がよろこぶとも言われることから、「悦口子湯(ヨルクジャタン)」の異名を持ちます。

そのお味たるや…山海の美味しいものがたくさん溶け込んだスープは、「悦口子湯」の名に偽りなし!朝鮮半島にある美味しいもの全部入りのような料理なわけですが、その味はぶつかり合うことなく一つの湯の中にまろやかに調和し、深い味わいを醸しだしています。
旅行中食べた中で最も美味しい料理でした。
神仙炉は一度は食べてみるべき料理であると宣言したいと思います!
北朝鮮行きたくないわ!っていう人もご安心を。神仙炉は韓国でも食べられますし、もしかすると日本の韓国料理屋でもあるかもしれない?(正直、扱ってない店が大多数ではないかと思いますが…)

夕食を終えて、ホテルへと戻り、今日の疲れを癒やします。
楽しいんですが、なかなか疲れる旅でした。これがまだまだ続くんだよなぁ、と思うと少し家が恋しくもなり…

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